試用販売の取引と仕訳

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では試用販売の取引と仕訳について解説します。

試用販売

一定期間お試しで商品を使ってもらってから、商品を買い取るかどうかを顧客に決めてもらう販売方法を試用販売といいます。商品を一度使ってもらい、商品のよさを確認してもらってから販売します。具体的には次のような商品で使われます。

  • 商品のよさを顧客が知らない商品(新商品など)
  • 顧客に合うか合わないかが使ってみなければ分からない商品(化粧品など)

試用販売が特殊な理由

売上勘定を使用するためには客観性と確実性が必要です。一般商品販売では客観性と確実性という2つの条件が満たされているため、商品の引渡しとともに売上勘定で仕訳を切ります。

しかし、試用販売の場合は商品を引き渡した時点では売上にはなりません。あくまでも商品を試してもらっているだけで売れていないからです。当然、客観性も確実性も満たされません。

売れたといえるのは、顧客に「この商品を買います」といってもらったときです。この瞬間に客観性と確実性が満たされます。よって、売上勘定を使用できるのは顧客が商品を買うという意思表示をしたときということになります。

試用販売の2つの記帳方法

試用販売には次の2つの記帳方法があります。

  • 対照勘定法(割賦販売で出てきた記帳方法)
  • 手許商品区分法(委託販売で出てきた記帳方法)

考え方は割賦販売・委託販売と同じなので、しっかりと考え方を理解しておくことが重要となります。

試用販売の取引と仕訳(対照勘定法)

試用販売のため商品を発送

「300,000円分(売価)の商品を試用販売のために得意先に試送した」場合の仕訳について考えてみましょう。

試用販売のため、商品を発送した時点では売上は発生しません。しかし、何も仕訳を切らなかった場合、商品を試送した記録が残りません。300,000円分の商品を試送したという記録を残しておくことが必要です。

現時点では売上にはなりませんが、商品の試送はしています。そのため、後で売上になるだろうという状況は存在しています。この状況を『試用仮売上』という勘定で表します。

金額は、後で売上になる金額の合計なので300,000円となります。よって、『(貸)試用仮売上300,000』となります。

次は借方です。現時点では売掛金にはなりませんが、商品の試送はしています。そのため、後で売掛金になるだろうという状況は存在しています。この状況を『試用未収金』という勘定で表します。

金額は、後で売掛金になる金額の合計なので300,000円となります。よって、『(借)試用未収金300,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
試用未収金 300,000 試用仮売上 300,000

ちなみに『試用未収金』『試用仮売上』という勘定は資産負債資本収益費用のどの分類にも当てはまりません。特殊な勘定です。

買取意思表示の連絡があった

「得意先から商品300,000円(売価)のうち200,000円(売価)について買取の意思表示があった」場合の仕訳について考えてみましょう。

買取の意思表示があったので、ここで売上を認識します。金額は買取の意思表示があった金額です。また、試用販売での売上を通常の売上と区別して『試用品売上』という勘定を使います。よって、『(貸)試用品売上200,000』となります。

次は借方です。あくまで買取の意思表示があっただけで、具体的に何かを受け取ったとは読み取れません。よって売掛金が発生したと考えられます。というわけで、『(借)売掛金200,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
売掛金 200,000 試用品売上 200,000

また、実際に売上となったことで、後で売上になる金額が減少します。よって、後で売上になる金額を表す『試用仮売上』が減少します。減少する金額は実際に売上となった金額と同じ200,000円です。よって、『(借)試用仮売上200,000』となります。

同様に、実際に売掛金となったことで、後で売掛金になる金額が減少します。よって、後で売掛金になる金額を表す『試用未収金』が減少します。減少する金額は実際に回収された金額と同じ200,000円です。よって、『(貸)試用未収金200,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
試用仮売上 200,000 試用未収金 200,000

2つの仕訳をまとめると、

借方 金額 貸方 金額
売掛金
試用仮売上
200,000
200,000
試用品売上
試用未収金
200,000
200,000

ちなみに、「(借)試用未収金 300,000/(貸)試用仮売上 300,000」や「(借)試用仮売上 200,000/(貸)試用未収金 200,000」という仕訳は備忘仕訳です。

あといくら試送している金額が残っているのかを忘れないように記録しているという考え方です。割賦販売の取引と仕訳で出てきた仕訳と同じ考え方になります。

商品の返品

「試送した商品のうち100,000円分(売価)が返品された」場合の仕訳について考えてみましょう。

買取の意思表示がもらえず返品されたので、売上は発生しません。また、後で売上になる金額が返品された分だけ減少します。よって、後で売上になる金額を表す『試用仮売上』が減少します。

減少する金額は返品された金額と同じ100,000円です。よって、『(借)試用仮売上100,000』となります。

同様に、後で売掛金になる金額も返品された分だけ減少します。よって、後で売掛金になる金額を表す『試用未収金』が減少します。減少する金額は返品された金額と同じ100,000円です。よって、『(貸)試用未収金100,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
試用仮売上 100,000 試用未収金 100,000

考え方は割賦販売の取引と仕訳(回収基準)と同じです。仕訳を覚えるのではなく、考え方をきちんと理解して仕訳を切れるようにしておくことが重要です。

割賦販売のときにきちんと考え方を理解しておけば、試用販売での仕訳はスムーズに切れるようになるはずです。しっかりと仕訳を理解しながら学習を進めましょう。

試用販売の取引と仕訳(手許商品区分法・その都度法)

手許商品区分法には「その都度法」と「期末一括法」があります。

試用販売のため商品を発送

「240,000円分(原価)の商品を試用販売のために得意先に試送した(その都度法)」場合の仕訳について考えてみましょう。

試用販売のため、商品を発送した時点では売上は発生しません。しかし、何も仕訳を切らないというのも問題です。商品を試送したので、手許の商品と試送して手許にない商品とを区分するために仕入勘定を試用品勘定に振り替えます

よって次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
試用品 240,000 仕入 240,000

買取意思表示の連絡があった

「得意先から商品240,000円(原価)のうち200,000円(原価)について買取の意思表示があった。なお、買取意思表示があった分の商品は売価では250,000円である」場合の仕訳について考えてみましょう。

買取の意思表示があったので、ここで売上を認識します。そこで、売上を売価で記帳します。また、試用販売での売上を通常の売上と区別するために「試用売上」という勘定科目を使います。よって、『(貸)試用品売上250,000』となります。

次は借方です。あくまで買取の意思表示があっただけで、具体的に何かを受け取ったとは読み取れません。よって売掛金が発生したと考えられます。というわけで、『(借)売掛金250,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
売掛金 250,000 試用品売上 250,000

また、売上原価を仕入勘定で計算するために、売れた分の試用品を仕入勘定に振り替えます。その都度法なので、この振替試用品に買取意思表示があった都度行います。

よって次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
仕入 200,000 試用品 200,000

試用品勘定には原価で振り替えているので、仕入勘定に振り替えるときも原価で振り替えます

2つの仕訳をまとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
売掛金
仕入
250,000
200,000
試用品売上
試用品
250,000
200,000

商品の返品

「試送した商品のうち50,000円分(原価)が返品された。なお、返品があった分の商品は売価では60,000円である」場合の仕訳について考えてみましょう。

買取の意思表示がもらえず返品されたので、売上は発生しません。また、返品されたので、試送していた商品が手許に戻ってきます。よって、試送していた商品が減少するため、『(貸)試用品50,000』となります。

また、手許の商品が増加するため、『(借)仕入50,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
仕入 50,000 試用品 50,000

試用品勘定には原価で振り替えているので、仕入勘定に振り替えるときも原価で振り替えます。

決算時

その都度法で仕訳を切っているため、「仕訳なし」となります。

考え方は委託販売(その都度法・期末一括法)の取引と仕訳で出てきたその都度法と同じです。仕訳を覚えるのではなく、考え方をきちんと理解して仕訳を切れるようにしておくことが重要です。

委託販売のときにきちんと考え方を理解しておけば、試用販売での仕訳はスムーズに切れるようになるはずです。しっかりと仕訳を理解しながら学習を進めましょう。

試用販売の取引と仕訳(手許商品区分法・期末一括法)

試用販売のため商品を発送

「240,000円分(原価)の商品を試用販売のために得意先に試送した(期末一括法)」場合の仕訳について考えてみましょう。

試用販売のため、商品を発送した時点では売上は発生しません。しかし、何も仕訳を切らないというのも問題です。商品を試送したので、手許の商品と試送して手許にない商品とを区分するために仕入勘定を試用品勘定に振り替えます

よって次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
試用品 240,000 仕入 240,000

買取意思表示の連絡があった

「得意先から商品240,000円(原価)のうち200,000円(原価)について買取の意思表示があった。なお、買取意思表示があった分の商品は売価では250,000円である」場合の仕訳について考えてみましょう。

買取の意思表示があったので、ここで売上を認識します。そこで、売上を売価で記帳します。また、試用販売での売上を通常の売上と区別するために「試用売上」という勘定科目を使います。よって、『(貸)試用品売上250,000』となります。

次は借方です。あくまで買取の意思表示があっただけで、具体的に何かを受け取ったとは読み取れません。よって売掛金が発生したと考えられます。というわけで、『(借)売掛金250,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
売掛金 250,000 試用品売上 250,000

試用品勘定には原価で振り替えているので、仕入勘定に振り替えるときも原価で振り替えます。また、期末一括法で記帳しているので、試用品勘定の仕入勘定への振替は決算時に行います

商品の返品

「試送した商品のうち50,000円分(原価)が返品された。なお、返品があった分の商品は売価では60,000円である」場合の仕訳について考えてみましょう。

買取の意思表示がもらえず返品されたので、売上は発生しません。また、返品されたので、試送していた商品が手許に戻ってきます。よって、試送していた商品が減少するため、『(貸)試用品50,000』となります。

また、手許の商品が増加するため、『(借)仕入50,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
仕入 50,000 試用品 50,000

試用品勘定には原価で振り替えているので、仕入勘定に振り替えるときも原価で振り替えます。また、返品の仕訳は期末一括法であってもその都度行います

決算時

期末一括法なので、試用品勘定の仕入勘定への振替は決算時に1年分まとめて行います売上原価を仕入勘定で計算するために、売れた分の試用品を仕入勘定に振り替えます

よって次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
仕入 200,000 試用品 200,000

考え方は委託販売(その都度法・期末一括法)の取引と仕訳で出てきた期末一括法と同じです。仕訳を覚えるのではなく、考え方をきちんと理解して仕訳を切れるようにしておくことが重要です。

委託販売のときにきちんと考え方を理解しておけば、試用販売での仕訳はスムーズに切れるようになるはずです。しっかりと仕訳を理解しながら学習を進めましょう。

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“試用販売の取引と仕訳” への12件のフィードバック

  1. あらふぃふぁー より:

    ■あけましておめでとうございます。

    昨年は、このブログのおかげで、独学で3級にほぼ満点合格できました。
    (2点、何かケアレスミスをしたようです)
    ありがとうございます。

    現在、2級に向けて勉強を始めています。
    (ブログ更新をさぼっていてすみません)
    この記事(手許商品区分法(その都度法))も勉強になっています。
    ひきつづきお世話になります。よろしくお願いいたします。

    リョウさんにとって、よい1年となりますように。
    そして、今年も、このブログから、独学でどんどん合格者が出ますように。

    • dokuboki より:

      新年あけましておめでとうございます。コメントありがとうございます。

      あらふぃふぁーさんが簿記3級を高得点で合格できたのは本当にすばらしいですね。さすがの一言です。

      簿記2級もこの流れで勝ち取りましょう。あらふぃふぁーさんなら特に心配はないとは思いますが…。

      今年もよろしくお願いします。このブログが簿記受験生みなさんのお役に立てるよう私もがんばっていきます。

  2. みかん より:

    ■あけましておめでとうございます。

    今年もよろしくお願いします。

    元旦から何故か簿記の勉強をしていました。
    普段なかなかまとまった時間がとれないので仕方がないですが、寂しい正月となってしまいましたが充実した一日になったと思います。

    今年も毎日かかさずリョウさんのブログを楽しみに読んでいくのでよろしくお願いします。

    • dokuboki より:

      あけましておめでとうございます。コメントありがとうございます。

      元旦から簿記というのもいいと思います。私も受験生だったときは正月返上で勉強していました。

      今年もよろしくお願いします。

  3. すーさん より:

    あけましておめでとうございます。
    はじめまして
    前回、あの合格率で落ちてしまいました。
    今度は頑張らねば・・・

    ところで、今回の試用品販売仕訳なのですが、
    試用品200,000円(売価250,000円)の販売仕訳なので、
    売掛金(借方)250,000/試用品売上(貸方)250,000
    となると思うのですが、間違いでしょうか?
    仕入勘定に再仕訳は仕入(借方)200,000/試用品(貸方)200,000の売価が250,000ですから・・・
    どうでしょうか
    お教えいただければ幸いです。
    今年も、よろしくお願いいたします。

    • dokuboki より:

      コメントありがとうございます。そしてご指摘ありがとうございます。

      すーさんのおっしゃるとおりです。完全に私の勘違いでした。早速修正しました。

      このようなミスは自分ではなかなか気付けないのでご指摘いただけて本当に助かります。

      こちらこそ今年もよろしくお願いします。

  4. いち より:

    はじめまして、いちと申します。
    試用品の返品時に、振替仕訳以外の仕訳は必要ないのかと疑問に思い、調べていたところこのサイトに辿り着きました。買取意思表示があった場合、(借)売掛金 xxx (貸)試用品売上 xxxとするのは、売上が発生したためであり、返品時には売上が発生しないのでその仕訳は必要ない(つまり試用品勘定を仕入勘定に振り返る振替仕訳だけで良い)という説明に納得しました。言われてみれば単純なことですが、頭の中が混乱していたので、わかりやすい説明に出会えて大変助かりました。今後また分からないことがあったら、このサイトを拝見しようと思います。大変参考になりました。ありがとうございました。

    • dokuboki より:

      いちさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

      特殊商品売買は取引そのものが複雑なので頭が混乱しますよね。お役に立てて嬉しいです。これからもぜひ参考にしてください。

  5. ちぃち より:

    初めまして。今年の2月から貴サイトを拝読させていただいております。
    早速質問です。
    試用品仮売上や試用品売上は、まだ、被得意先の手許にあるので、貸方勘定ですか?

    • dokuboki より:

      ちぃちさん、コメントありがとうございます。

      対照勘定法においては商品を試送した段階で試用品として送ったことを忘れないように「試用仮売上」としておいて、そのうち売上が成立したり返品されたりして「試用品を送っている状態」ではなくなったときに「試用仮売上」を減少させます。

      「試用未収金」と「試用仮売上」はいつもセットで使われます。この仕訳は備忘仕訳といって、商品を試用品として送っている状態にあることを忘れないための仕訳です(実はそれ以上の意味はありません)。仕訳は借方だけとか貸方だけに記帳することはできないのでこのような形になっています。そのように考えた方が理解しやすいかもしれません。

  6. ちぃち より:

    ありがとうございます。

    頑張ります。

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