有価証券の時価が著しく下落した場合の仕訳

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では有価証券の時価が著しく下落した場合の仕訳について解説します。

有価証券の評価

有価証券の評価は次の通りです。

有価証券の分類 会計処理
売買目的有価証券 時価
満期保有目的債券 取得原価または償却原価
子会社株式及び関連会社株式 取得原価
その他有価証券 時価

ただ、このように評価するのはあくまでも「通常時」です。有価証券の時価が著しく下落した場合にも同じ方法で処理するのは問題があると言えます(どのように問題があるのかは、これから学習していきます。)。

ちなみに、「時価が著しく下落した」とは、実務上、時価が取得原価から50%以上下落した場合を言います

市場価格が著しく下落した場合には次のような会計処理を行うことになります。

有価証券の時価が著しく下落した場合の会計処理(強制評価減)

売買目的有価証券

売買目的有価証券は時価で評価しているので、時価が著しく下落した場合であっても通常どおり時価で評価して問題ありません。「時価が著しく下落した」という状況をきちんと反映しているからです。よって時価が著しく下落した場合も通常時と同じ「時価」で評価します。

満期保有目的債券

満期保有目的債券は通常時は償却原価で評価しています(償却原価法が使えない場合は取得原価で評価しています。)。償却原価で評価できるのは、「満期償還になれば、額面金額で現金化することができるという前提がある」からです。

債券の時価が著しく下落したということは、「この債券が満期にきちんと償還されるかどうか分からない」と市場参加者から判断されているということです。

確実に償還されると思われている債券の時価が半分以下になることは通常はありえません。償還されないかもしれないという不安から債券が売られることで時価が著しく下がっているのです。

このように考えると、このまま償却原価で評価するのは適切とは言えません。

そこで、時価が著しく下落した場合は「回復する見込みがあると認められる場合」を除いて時価で評価します。その結果、翌期首からは「切り下げた後の時価」が帳簿価額になります(洗替法ではないということです。)。

このとき多額の評価損が出ますが、この評価損は当期の損失(特別損失)として処理します。

子会社株式及び関連会社株式

「子会社株式及び関連会社株式」は通常時は「取得原価」で評価します。固定資産と同じ性質の投資なので固定資産と同じ評価方法で処理するのが合理的だからです。

固定資産の場合、価値が著しく下落したときには強制的に取得原価を切り下げます(この取得原価の切り下げを「固定資産の減損処理」と言います。固定資産の減損処理については簿記1級で学習します。)。

それなのに「子会社株式及び関連会社株式」の時価が著しく下落しても取得原価で評価していてはつじつまが合いません。

そこで、時価が著しく下落した場合は「回復する見込みがあると認められる場合」を除いて時価で評価します。その結果、翌期首からは「切り下げた後の時価」が帳簿価額になります(洗替法ではないということです。)。

この強制評価減にともなって多額の評価損が出ますが、この評価損は当期の損失(特別損失)として処理します。

その他有価証券

その他有価証券は時価で評価します。しかし、売買目的有価証券と同じように会計処理を変える必要はないとは言えません。その他有価証券は洗替法なので翌期首には取得原価に戻ってしまうからです。

時価が著しく下落したときの会計処理は取得原価を時価に「永久に」修正します。

そこで、時価が著しく下落した場合は「回復する見込みがあると認められる場合」を除いて「永久に」時価で評価します。その結果、翌期首からは「切り下げた後の時価」が帳簿価額になります。

この強制評価減にともなって多額の評価損が出ますが、この評価損は当期の損失(特別損失)として処理します。

時価(市場価格)がない株式の場合の会計処理(実価法)

時価(市場価格)がない株式であっても、株式の発行会社の財政状態が悪化して実質的な価額が著しく低下した場合には「有価証券の時価が著しく下落した場合」と同じ会計処理を行います

つまり、その実質的な価額まで帳簿価額を切り下げ、発生した評価損は当期の損失として処理します。

有価証券の時価が著しく下落した場合の会計処理の具体例

満期保有目的債券

期中に取得原価2,900,000円(額面:3,000,000円)で購入していた債券がある(満期保有目的債券)。償却原価法の適用による決算日の金利調整差額は80,000円、この債券の時価は1,350,000円であった。なお、この時価の下落は「著しい」と判断された。

この場合の決算整理仕訳を考えてみましょう。

満期保有目的債券で償却原価法が適用できるので償却原価法を適用して取得原価を償却原価に修正します。償却原価法の適用による決算日の金利調整差額は80,000円です。よって『(借)満期保有目的債券80,000』『(貸)有価証券利息80,000』となります。

次に時価の著しい下落について処理を行います。取得原価(償却原価)は(取得原価2,900,000円+金利調整差額80,000円=)2,980,000円、時価は1,350,000円なので、時価が(2,980,000円-1,350,000円=)1,630,000円下落しています。

この著しい時価の下落について強制評価減を行います。帳簿価額を時価まで切り下げるので『(貸)満期保有目的債券1,630,000』、この時価の下落は「投資有価証券評価損」という勘定科目を使って処理します。よって『(借)投資有価証券評価損1,630,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
満期保有目的債券
投資有価証券評価損
80,000
1,630,000
有価証券利息
満期保有目的債券
80,000
1,630,000

子会社株式及び関連会社株式

期中に8,000,000円で購入していた株式があり、この株式は「子会社株式」に分類している。この株式の時価は3,000,000円であった。なお、この時価の下落は「著しい」と判断された。この場合の決算整理仕訳を考えてみましょう。

子会社株式なので本来であれば取得原価で評価するのですが、時価の下落が著しいと判断されているので強制評価減を行います。時価の下落は(取得原価8,000,000円-時価3,000,000円=)5,000,000円なので、この下落分だけ帳簿価額を切り下げます。

よって『(貸)子会社株式5,000,000』となります。また、この下落は「子会社株式評価損」という勘定科目を使って処理します。よって『(借)子会社株式評価損5,000,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
子会社株式評価損 5,000,000 子会社株式 5,000,000

その他有価証券

期中に5,000,000円で購入していた株式があり、この株式は「その他有価証券」に分類している。この株式の時価は2,000,000円であった。なお、この時価の下落は「著しい」と判断された。この場合の決算整理仕訳を考えてみましょう。

その他有価証券は通常であれば、全部純資産直入法または部分純資産直入法で処理します。しかし時価の下落が著しいと判断されているので強制評価減を行います。

時価の下落は(取得原価5,000,000円-時価2,000,000円=)3,000,000円なので、この下落分だけ帳簿価額を切り下げます。よって『(貸)その他有価証券3,000,000』となります。

また、この下落は「その他有価証券評価損」という勘定科目を使って処理します。よって『(借)その他有価証券評価損3,000,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価損 3,000,000 その他有価証券 3,000,000

時価(市場価格)がない株式の場合の会計処理の具体例

前期にA社株式40株(市場価格なし、その他有価証券に分類、取得価額は1株あたり50,000円)を取得したが、当期末現在のA社の財政状態は次のように著しく悪化している。当期末において必要な仕訳を示しなさい。なお、A社の発行済み株式は400株である。

A社貸借対照表
諸資産 50,000,000 諸負債 45,000,000
純資産 5,000,000

この場合の決算整理仕訳を考えてみましょう。

市場価格がないその他有価証券は、通常であれば「取得原価または償却原価」で処理します。しかし時価の下落が著しいと判断されているので、実質的な価額まで帳簿価額を切り下げる会計処理を行います。

A社の純資産は5,000,000円であり、当社はA社の発行済み株式の(保有株式40株÷発行済株式400株=)10%を保有しているので、当社が保有している株式の実質価額は(5,000,000円×10%=)500,000円です。

それに対してA社株式の帳簿価額は(保有株式40株×1株あたり50,000円=)2,000,000円です。よって価値の下落分は(帳簿価額2,000,000円-実質価額500,000円=)1,500,000円なので、この下落分だけ帳簿価額を切り下げます。よって『(貸)その他有価証券1,500,000』となります。

また、この下落は「その他有価証券評価損」という勘定科目を使って処理します。よって『(借)その他有価証券評価損1,500,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価損 1,500,000 その他有価証券 1,500,000

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