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満期保有目的債券の評価をわかりやすく【額面より高い金額で取得した場合も解説】

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  • 簿記を勉強していると満期保有目的債券っていう勘定科目が出てくるんだけど……
  • 売買目的有価証券と満期保有目的債券の違いが分からない
  • 満期保有目的債券について教えて!

満期保有目的債券を説明するときには難しい言葉が多く出てくるので難しく感じる人が多いです。

私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん満期保有目的債券についても熟知しています。

この記事では満期保有目的債券の期末の評価について、「金融商品に関する会計基準」を読み解くことでわかりやすく解説します。

この記事を読めば満期保有目的債券について理解が深まるので、簿記2級で満期保有目的債券が出題されても自信を持って解答することができます。

結論を一言で言うと、満期保有目的債券は満期まで保有することを前提として取得した債券で、満期保有目的債券は取得原価で評価します。

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満期保有目的債券の期末の評価:金融商品に関する会計基準16を読み解く

満期保有目的債券の期末の評価については、金融商品に関する会計基準16を読み解くことで解説していきます。次の記述が金融商品に関する会計基準16です。

満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(以下「満期保有目的の債券」という。)は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。

このままでは分かりづらいので、少しずつ読み進めていきます。

満期保有目的債券は、取得原価をもって貸借対照表価額とする

満期保有目的債券は、取得原価をもって貸借対照表価額とします。これが原則です。

貸借対照表価額とは、貸借対照表に記入される金額ということで、決算整理仕訳をしたあとの金額ということです。

売買目的有価証券の場合は、決算整理仕訳で評価損益を計上し、その結果、時価で貸借対照表に記入します。つまり、売買目的有価証券は時価をもって貸借対照表価額とします。

関連記事

売買目的有価証券の期末の評価については「有価証券の期末の評価」で詳しく解説しています。

売買目的有価証券は時価で評価するのに、なぜ満期保有目的債券は時価で評価しないのでしょうか。

満期保有目的債券を時価で評価しない理由:満期まで保有するので時価は無関係だから

満期保有目的債券は時価ではなく取得原価で貸借対照表に記載するのが原則です。では、なぜ満期保有目的債券はなぜ時価で評価しないのでしょうか。

それは、満期まで保有するのであれば、時価がいくらであっても関係ないからです。

満期日になればその債券の発行会社から額面で買い戻してもらえます。

額面で買い戻してもらえるということは、その債券は時価とは無関係に額面で売ることができるということです。そのため、時価で評価する必要がないのです。

また、いくらで売れるか決まっているのに取得原価と時価の差額を当期の損益として計上するのは合理的とはいえません

このように同じ有価証券でも売買目的か満期保有目的かで評価の方法が変わります。

債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合

債券には国が発行する「国債」、地方自治体が発行する「地方債」、会社が発行する「社債」などがあります。ここからは最も出題例が多い「社債」を例に解説していきます。

社債については「社債の仕訳」で詳しく解説しています。

社債の額面は通常は1口100円です。この社債を額面で10,000口買えば、取得原価は100円×10,000口=1,000,000円となります。

しかし、社債などの債券は額面金額より低い金額や高い金額で発行されることがあります。例えば、額面100円の社債を95円で発行したり、105円で発行したりという感じです。

この場合、95円で10,000口買えば、取得原価は95円×10,000口=950,000円、105円で買えば、取得原価は105円×10,000口=1,050,000円となります。

それぞれ次のように名前がついています。

  • 社債を額面金額より低い金額で発行すること…割引発行
  • 社債を額面金額と同じ金額で発行すること…平価発行
  • 社債を額面金額より高い金額で発行すること…打歩発行

打歩は「うちぶ」と読みますが、打歩をそのまま読むと「だふ」で、ダフ屋の語源となっています。

定価より高く売っているのがダフ屋で、額面金額より高い金額で発行するのが打歩発行です。

取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるとき

「取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められる」とはどういうことか考えるために、割引発行と平価発行を例に考えてみます。

割引発行の場合

額面が1口100円の社債(1年満期、クーポン利息なし)を考えてみます。

この社債を割引発行・1口98円で10,000口取得したとします。取得したときには、980,000円支払って社債を手に入れることになります。

1年後には満期となり、額面で買い戻してもらえるので、社債を渡して1,000,000円受け取ることになります。

平価発行の場合

額面が1口100円の社債(1年満期、9,800口あたりのクーポン利息20,000円)を考えてみます。

この社債を平価発行・1口100円で9,800口取得したとします。取得したときには、980,000円支払って社債を手に入れることになります。

1年後には満期となり、額面で買い戻してもらえるので、社債を渡して980,000円と有価証券利息20,000円で合計1,000,000円受け取ることになります。

割引発行と平価発行に本質的な違いはない

  • 額面100円・取得原価98円(割引発行)・10,000口取得・1年満期・クーポン利息なし
  • 額面100円・取得原価100円(平価発行)・9,800口取得・1年満期・クーポン利息20,000円

この2つの取引の本質は全く同じです。どちらも「980,000円支払って社債を手に入れ、満期日に1,000,000円受け取っている」のです。

この2つの違いは、「割引発行でクーポン利息なし」という点と「平価発行でクーポン利息あり」という点です。

このことは「割引発行でクーポン利息なし」と「平価発行でクーポン利息あり」が本質的に同じ取引だということを意味しています。

20,000円分割引きして発行することとクーポン利息を20,000円つけて平価発行することは同じということです。

これが「取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるとき」の意味になります。

取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるとき

「取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められる」とはどういうことか考えるために、今度は平価発行と打歩発行を例に考えてみます。

平価発行の場合

額面が1口100円の債券(1年満期、10,200口あたりのクーポン利息20,000円)を考えてみます。

この社債を平価発行・1口100円で10,200口取得したとします。取得したときには、1,020,000円支払って社債を手に入れることになります。

1年後には満期となり、額面で買い戻してもらえるので、社債を渡して債券金額1,020,000円と有価証券利息20,000円で合計1,040,000円受け取ることになります。

打歩発行の場合

額面が1口100円の債券(1年満期、10,000口あたりのクーポン利息40,000円)を考えてみます。

この社債を打歩発行・1口102円で10,000口取得したとします。取得したときには、1.020,000円支払って社債を手に入れることになります。

1年後には満期となり、額面で買い戻してもらえるので、社債を渡して債券金額1,000,000円と有価証券利息40,000円で合計1,040,000円受け取ることになります。

平価発行と打歩発行に本質的な違いはない

  • 額面100円・取得原価100円(平価発行)・10,200口取得・1年満期・クーポン利息20,000円
  • 額面100円・取得原価102円(打歩発行)・10,000口取得・1年満期・クーポン利息40,000円

この2つの取引の本質は全く同じです。どちらも「1,020,000円支払って社債を手に入れ、満期日に1,040,000円受け取っている」のです。

この2つの違いは、「平価発行でクーポン利息20,000円」という点と「打歩発行かでクーポン利息40,000円」という点です。

このことは「平価発行でクーポン利息20,000円」と「打歩発行かでクーポン利息40,000円」が本質的に同じ取引だということを意味しています。

20,000円分高く発行することとクーポン利息を20,000円減らして平価発行することは同じということです。

これが「取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるとき」の意味になります。

社債の本質

社債は企業が発行する借用証書のようなものです。

借用証書は企業から返してもらうことしかできませんが、社債はたとえ満期前でも市場で第三者に売却できるという違いがあるだけで、社債の本質は借入金なのです。

このように考えても、額面金額と取得価額の差額の本質は利息だと言えます。

社債については「社債の仕訳」で詳しく解説しています。

償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする(割引発行)

「取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときには償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする」とあります。

では、この償却原価法とはなんでしょうか。割引発行を例に、期首に額面が1口100円の債券(満期5年・クーポン利息なし)を割引発行・1口95円で10,000口購入した場合について考えてみます。

この場合、社債取得時に95円×10,000口=950,000円を支払い、5年後の満期日に100円×10,000口=1,000,000円を受け取ります。

そして、この差額(債券金額1,000,000円-取得原価950,000円=)50,000円の本質は利息でした

ということは、この50,000円という利息は取得時から満期日までの5年間社債を保有していたことに対する利息ということになります。

この利息50,000円について社債の満期日のみ仕訳を切ったとすると、各年の有価証券利息は次のようになります。

  • 1年目の有価証券利息…0円
  • 2年目の有価証券利息…0円
  • 3年目の有価証券利息…0円
  • 4年目の有価証券利息…0円
  • 5年目の有価証券利息…50,000円

5年目だけ50,000円の有価証券利息が計上されるのはまずいです。この社債は5年間ずっと保有しています。5年目だけ保有していたわけではありません。

それなのに、有価証券利息が5年目だけ50,000円で1年目から4年目の有価証券利息が0円というのはあきらかに不合理です。

これでは簿記の目的である『企業の正しい経営成績を明らかにすること』ができていません。当期の収益は当期の収益としてきちんと計上しなければならないのです。

企業の正しい経営成績を明らかにするためには、5年目にのみ計上されている有価証券利息50,000円を、社債を保有している5年間でおしなべる必要があります。

5年間でおしなべると次のようになります。

  • 1年目の有価証券利息…10,000円
  • 2年目の有価証券利息…10,000円
  • 3年目の有価証券利息…10,000円
  • 4年目の有価証券利息…10,000円
  • 5年目の有価証券利息…10,000円

このように処理する方法が償却原価法です。

この計算方法は定額法と言われている方法です。もう一つ利息法と言われる計算方法があります。利息法は簿記1級で学習するのでここでは割愛します。

償却原価法は当期の収益を当期の収益として計上するため、正しい期間損益を算定するために行います。

関連記事

償却原価法の具体的な仕訳や会計処理については「満期保有目的債券における償却原価法」で詳しく解説しています。

償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする(打歩発行)

「取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときには償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする」とあります。

では、この償却原価法とはなんでしょうか。打歩発行を例に、期首に額面が1口100円の債券(満期5年・クーポン利息2%)を打歩発行・1口105円で10,000口購入した場合について考えてみます。

この場合、社債取得時に1,050,000円を支払い、5年後の満期日に1,000,000円を受け取ります。そして、この差額(取得原価1,050,000円-債券金額1,000,000円=)50,000円の本質は利息でした

打歩発行の場合マイナスの利息になります。

ということは、この50,000円というマイナスの利息は取得時から満期日までの5年間社債を保有していたことに対する利息ということになります。

この利息50,000円について社債の満期日のみ仕訳を切ったとすると、各年の有価証券利息は次のようになります。

  • 1年目の有価証券利息…20,000円
  • 2年目の有価証券利息…20,000円
  • 3年目の有価証券利息…20,000円
  • 4年目の有価証券利息…20,000円
  • 5年目の有価証券利息…利払い20,000円-利息50,000円=-30,000円

5年目だけ有価証券利息の金額がー30,000円になるのはまずいです。この社債は5年間ずっと保有しています。

それなのに、1年目から4年目の有価証券利息が20,000円ずつで5年目だけ-30,000円というのはあきらかに不合理です。

これでは簿記の目的である『企業の正しい経営成績を明らかにすること』ができていません。当期の収益は当期の収益としてきちんと計上しなければいけません。

企業の正しい経営成績を明らかにするためには、この5年間の有価証券利息の合計(クーポン利息20,000円×4年-額面金額と取得原価の差額30,000円=)50,000円を、この社債を保有している5年間でおしなべる必要があります。

5年間でおしなべると次のようになります。

  • 1年目の有価証券利息…10,000円
  • 2年目の有価証券利息…10,000円
  • 3年目の有価証券利息…10,000円
  • 4年目の有価証券利息…10,000円
  • 5年目の有価証券利息…10,000円

このように処理する方法を償却原価法といいます。償却原価法は当期の収益を当期の収益として計上するため、正しい期間損益を算定するために行います。

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償却原価法の具体的な仕訳や会計処理については「満期保有目的債券における償却原価法」で詳しく解説しています。

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【まとめ】満期保有目的債券

満期保有目的債券は「満期まで保有することを前提として取得した債券」です。満期保有目的債券は、取得原価をもって貸借対照表価額とするのが原則となっています。

満期保有目的債券において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められる場合は償却原価法を適用しなければなりません。

償却原価法は当期の収益を当期の収益として計上するために行うもので、償却原価法を適用することによって正しい期間損益を算定することができます。

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コメント

  1. みんと より:

    ■苦手な人が多い重要論点ですね

    リョウさん
    満期保有目的有価証券や社債の買入償還など、2級受験生が苦手とする論点ですね。
    期末評価の簿価計算と利息の計算
    それに関する仕訳

    私自身、社債では理解するのに時間がかかりました(笑)

    タイムテーブルを実際に書いたり色々やってやっと覚えましたが、仕訳問題はもちろん、財務諸表作成や精算表問題では必ず出題されます。
    受験生には要点を押さえて欲しい論点の一つです。

    またブログで紹介させて頂きました。
    いつもありがとうございます。

    • dokuboki より:

      こちらこそいつも紹介していただいて、ありがとうございます。

      ここは難しいです。しかし、ここが分からなければ色々なところに影響が出てしまうところでもあります。極めて重要なので、複数回に分けて、しかも会計基準まで引用して解説しています。

      ここを乗り切ることができれば、簿記2級の勉強がかなり楽なのではないかと思います。簿記受験生のみなさんには踏ん張ってほしいところです。

      コメントありがとうございました。ご紹介いただけているのには気付いていたのですが、連続のコメントになると思い、お礼のコメントは差し控えさせていただいたところでした。失礼いたしました。今後ともよろしくお願いします。

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