- 簿記を勉強していると社債を割引発行する取引が出てくるんだけど……
- 社債を割引発行せずに利息で調整しない理由が分からない
- 社債を割引発行する理由を教えて!
簿記を勉強していると社債を割引発行する取引が出てきますが、割引発行をする理由が分からないまま勉強を続けている方が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん社債を割引発行する理由についても熟知しています。
この記事ではクーポン利息で調整しない理由、社債を割引発行する理由を解説します。
この記事を読めば社債を割引発行する理由が分かるので、簿記の理解を深めることができます。
結論を言うと、社債を割引発行する理由は「毎年の利払いによる負担を減らすため」です。
平価発行と割引発行
「満期保有目的債券の評価【額面より高い金額で取得した場合も解説】」で割引発行と平価発行は本質的には同じだと解説しました。では、なぜ発行会社は割引発行をするのでしょうか。
全て平価発行するようにすれば、償却原価法のような複雑な仕訳を切る必要もなくなります。割引発行するにはそれなりの理由が発行会社にはあるはずです。
発行会社から見ると平価発行の方が現金が減少する時期が早い
- 額面100円・取得原価96円(割引発行)・10,000口取得・4年満期・クーポン利息なし
- 額面100円・取得原価100円(平価発行)・9,600口取得・4年満期・クーポン利息10,000円(利払い年1回)
この2つの社債について考えてみます。この社債はどちらも次のようになります。
- 社債取得原価…960,000円
- 1年間の有価証券利息勘定…10,000円
この2つの社債は本質的には同じものです。しかし、発行会社の利払いのタイミングが違います。
「額面100円・取得原価96円(割引発行)・10,000口取得・4年満期・クーポン利息なし」の社債を発行した場合、発行会社の現金の動きは次のようになります。
- 発行時…960,000円の現金増加
- 発行1年後…現金に動きなし
- 発行2年後…現金に動きなし
- 発行3年後…現金に動きなし
- 発行4年後(満期)…1,000,000円の現金減少
対して「額面100円・取得原価100円(平価発行)・9,600口取得・4年満期・クーポン利息10,000円(利払い年1回)」の社債を発行した場合、発行会社の現金の動きは次のようになります。
- 発行時…960,000円の現金増加
- 発行1年後…10,000円の現金減少
- 発行2年後…10,000円の現金減少
- 発行3年後…10,000円の現金減少
- 発行4年後(満期)…債券金額960,000円+利払い10,000円=970,000円の現金減少
平価発行の方が現金が減少する時期が早いのです。
金利は高くして利払いの負担を軽くするために割引発行する
日本国内において最も安全な債券は国債です。国債より金利が低い社債を発行しても誰も買ってくれません。
そのため、金利は国債より高く設定しなければなりません。しかし、金利を高く設定すれば、毎年の利払いが苦しくなります。
そこで、毎年の利払いを少なくするために割引発行します。割引発行することで実質的な利率を高くすることができます。
クーポン利率は低くても、金利調整差分の利息で補えるのです。
金利を高く設定しなければ買ってもらえないけれど、利払いの負担は軽くしたいときに割引発行するといえます。
【まとめ】社債の割引発行をなぜ行うのか
社債を買ってもらうためにはある程度の利息をつけなければいけません。しかし、高い利息をつけると毎年の利払いが苦しくなってしまいます。
そこで、割引発行にすることによって現金を支払うタイミングを後にして利払いの負担を小さくしています。
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