- 簿記を勉強していたら手形のところで対照勘定法とか評価勘定法が出てきたんだけど……
- 対照勘定法と評価勘定法の会計処理が分からない
- 対照勘定法と評価勘定法について教えて!
簿記論で出てくる対照勘定法と評価勘定法は難しい会計処理なので、理解できずに混乱してしまう方が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん対照勘定法についても評価勘定法についても熟知しています。
この記事では対照勘定法と評価勘定法の会計処理の考え方を解説します。
この記事を読めば対照勘定法と評価勘定法についてより深く理解できるので、対照勘定法と評価勘定法に関する問題が簿記論で出題されても自信を持って解答することができます。
結論を一言で言うと、手形を割り引いた場合、偶発債務の仕訳を「手形割引義務見返」と「手形割引義務」の2つの勘定科目を使って切る方法が対照勘定法、「割引手形」という勘定科目を使って切る方法が評価勘定法です。
裏書手形・割引手形の3つの仕訳方法
手形を裏書きしたときや手形の割引をしたときの記帳方法は次の3つがあります。
- 直接控除法(簿記3級)
- 評価勘定法(簿記論)
- 対照勘定法(簿記論)
具体例をあげながら考えてみます。
1.直接控除法(簿記3級):遡求義務の仕訳は切らない方法
この例題の場合、通常の考え方で仕訳を切ると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 100,000 | 受取手形 | 100,000 |
この仕訳が簿記3級で学習する「直接控除法」による仕訳です。
商品を100,000円仕入れたから「(借)仕入100,000」、手元の手形を譲渡することで手形代金を受け取る権利を失ったから「(貸)受取手形100,000」というわけです。
ですが、手形には「裏書きした手形の代金が支払人から支払われなかったら、自分が代わりに支払わなければならないこともある」というルールがあります。このルールのことを「遡求義務」といいます。
直接控除法では遡求義務ついては全く仕訳を切っていないことになります。直接控除法では次のように考えるからです。
- 遡求義務は現時点では確実に支払わなければならないというものではないので「負債」にはあたらない→仕訳を切る必要はない
- 遡求義務は受取手形記入帳からすぐに調べることができる→仕訳として残す必要はない
この2つの理由はきちんと筋が通っていることから、直接控除法も正しい会計処理として認められています。
ですが、遡求義務を仕訳として残したい場合もあります。遡求義務を仕訳として残す方法が評価勘定法です。
2.評価勘定法(簿記論):遡求義務の仕訳を「裏書手形」で切る方法
遡求義務は仕訳を切る必要のないものですが、次のような考え方もあります。
- 遡求義務は場合によっては企業の倒産につながるような一大事にもなりかねない
- 総勘定元帳からも遡求義務が分かるようにしておきたい
- 仕訳として残したい
この考え方も一理あります。そもそも受取手形記入帳は義務づけられているものではありません。
記帳義務がない受取手形記入帳に対して「受取手形記入帳を見れば分かるから」という理屈に問題がないとも言い切れません。
そこで登場するのが評価勘定法です。
この例題を評価勘定法では次のような仕訳になります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 100,000 | 裏書手形 | 100,000 |
直接控除法と異なる点は、貸方が受取手形ではなく裏書手形となっているところです。貸方を裏書手形とすることで受け取ったときに増加した受取手形はそのまま借方に残ることになります。
そして、支払期日に無事手形代金が支払われると次の仕訳を切ることになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
裏書手形 | 100,000 | 受取手形 | 100,000 |
1つ目の仕訳と2つ目の仕訳を合わせると直接控除法と同じ仕訳になります。
また、評価勘定法の場合、各勘定残高は次のような意味を持つことになります。
- 受取手形:受け取った手形の総額
- 裏書手形:裏書きした手形の総額(遡求義務がある手形の総額)
- 受取手形-裏書手形:手形代金を請求できる権利の総額
ここで「手形代金を請求できる権利の総額」、つまり「本来の受取手形勘定が表す金額」が引き算しなければ求まらないという問題が発生します。
「本来の受取手形勘定が表す金額」が引き算しなければ求まらないという問題を解決するのが対照勘定法です。
3.対照勘定法(簿記論):遡求義務の仕訳を「手形裏書義務見返」と「手形裏書義務」で切る方法
対照勘定法でこの例題の仕訳を切ると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 手形裏書義務見返 | 100,000 100,000 | 受取手形 手形裏書義務 | 100,000 100,000 |
上の仕訳は直接控除法と同じです。遡求義務を下の仕訳が表しています。
このような仕訳にすることで「手形代金を請求できる権利の総額」、つまり「本来の受取手形勘定が表す金額」を受取手形勘定が表すことになります。2の評価勘定法の問題点が解決しました。
そして、支払期日に無事手形代金が支払われると次の仕訳を切ることになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
手形裏書義務 | 100,000 | 手形裏書義務見返 | 100,000 |
3つの仕訳を合わせると直接控除法と同じ仕訳になります。
【まとめ】対照勘定法・評価勘定法とは【受取手形・割引手形・裏書手形】
手形を裏書きしたときや手形の割引をしたときの記帳方法は次の3つがあります。
- 直接控除法(簿記3級):遡求義務の仕訳は切らない方法
- 評価勘定法(簿記論):遡求義務の仕訳を「裏書手形」で切る方法
- 対照勘定法(簿記論):遡求義務の仕訳を「手形裏書義務見返」と「手形裏書義務」で切る方法
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