取得原価主義の問題点

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。前回、会計の目的の歴史的な流れと現在の状況という記事で、最近は投資期間が短期になることで貸借対照表が再び重視されるようになってきたとお伝えしました。

ですが、貸借対照表が重視されるようになってきたのにはもう一つ大きな理由があります。それは「取得原価主義には大きな問題点があるから」です。この記事では取得原価主義の問題点についてお伝えします。

損益計算書を重視することで採用されるのが取得原価主義

損益計算書で行われる「利益の計算」を重視するためには、そのもととなる「収益」や「費用」を適正に計算する必要があります。

そこで、固定資産を取得するのにかかった金額を固定資産の使用期間に配分する「減価償却」など、いわゆる「費用・収益の期間配分」が行われることになりました。ここで使用されるのが「取得原価」です。

このように、利益を適正に計算する目的を達成するために発展してきたのが「取得原価主義」だと言えます(逆にそのときの時価で評価する「時価主義」だと時価の変動が利益を大きく変動させてしまい、利益を適正に計算することができなくなってしまいます)。

取得原価主義の問題点

ですが、取得原価主義には大きな問題点があります。それは「利益操作に非常に使いやすい」ということです。

資産を取得原価で計上すると、時価との差額が発生します。時価との差額は一般的に年月が長くなればなるほどどんどん大きくなるのが一般的で、例えばバブル期に購入した資産などを取得原価で計上していたりすると大きな含み損(評価損)が発生していると思われます。

逆に1950年代といった非常に物価が安かった時代に取得した土地などを取得原価で計上していたりすると、大きな含み益(評価益)が発生しているでしょう。

こういった「含み益」や「含み損」は取得原価主義では全く財務諸表に表れません。ずっと隠れている、いわば「潜在的な」損益です。これらの潜在的な損益は企業が資産を売却することで実現させることができます。

つまり企業の都合で、企業の好きなタイミングで利益や損失を実現させることができるということで、これが「利益操作」につながるのです。

例えば「今期は赤字だからあの含み益が大きい土地でも売って黒字にするか」「今期は想定以上に黒字だったから、このタイミングでバブル期に買ってしまった株式を売っておくか」といったことが簡単にできてしまうのです。

しかも、このような取引は粉飾決算というわけではありません。売っていないのに売ったことにしたりすればもちろん問題ですが、現実に売却しているのであれば会計上は何の問題もないということになります。

つまり取得原価主義を採用している以上、利益操作が可能になるのは当然ということになるのです。

取得原価主義から時価主義へ

そこで、こういった利益操作を排除するために、最近は取得原価主義から時価主義に移行していますその他有価証券の時価評価などはその一例だと言えます。

ただ、営業活動で使っている「設備」や「工場」など、利益操作のために売却することはおおよそ考えられないようなものにまでこの時価主義を適用するのは不適切です。

なのでそういった「営業活動で使用している資産」については、今でも取得原価主義が採用されています(「固定資産の減損」や「棚卸資産の低価法の適用」などは利益操作の排除が目的というより、損失を早めに計上する「保守主義」という意味合いが強いです)。

このような形で会計の考え方を理解しておくと普段の簿記の勉強でもより理解が深まります。

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